ゴルフスイングという運動の学習と指導3:ゴルフスイングの始まり
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スポーツ運動学はスポーツ運動の発生や伝承について考える学問ですが、そのためには一瞬で終わってしまう運動がどういった動きで成り立っているのか把握する必要があります。対象となる動きを把握しないと学習・指導はありえないからですが、マイネル教授はこの分析方法には5種類あると言っています。
この運動対象の把握で注意しなければならないのは、細かく分析しすぎないことです。運動は細かく分析すればするほど、その運動の本質なのか個性的な癖のような動きなの分からなくなってしまうからです、
では、マイネル教授がいう運動の考察法の一つ目の歴史的・社会的考察法について説明します。これはスポーツ運動が行われる時の歴史的背景や社会状態とスポーツ運動との関係を考えるというものです。簡単に言うと、スポーツ運動が世の中の常識から影響を受けたり、歴史の中でどのように変化してきたかを考えて動きの本質を把握するといった感じの方法です。
この考察法を、ゴルフスイングの学習・指導のあてはめてみると、時代とともに変化してきた道具に対して構え方や振り方がどう変わったかを知ることの重要性が浮かび上がります。ここから現在の道具にもっと適した構え方と振り方の大枠が割り出せるからです。
ゴルフはもともと海沿いの牧草地で羊飼いが石ころを棒きれで打って遊んでいたことに端を発する、というのが一般的なゴルフの起源です。このころのゴルフではボールは石ころや木でしたが、やがて牛革に鵞鳥の羽を詰めて固めたものが使われるようになりました。
この「フェザリー」という名前のボールは石ころや木のボールと同じで、表面には今のボールが持つディンプルはありませんでした。ここから分かることは、この頃のゴルフにはスピンという概念はなかったということです。
そのためこの時代のスイングはボールを低く打ち出して転がして運ぶちょうどホッケーのような振り方だったようです。この時代の指導書には下の図のようなスイングが理想的とされていました。
いまのスイングとはだいぶ違いますね。
つづく