博士プロがズバッと答えます その3 「スポーツ運動学ってなに?」
こんにちは! コンバインドプレーン理論開発者の安藤秀です。
ブログ版「博士プロがズバッと答えます」です。当ブログではYouTube版「博士プロがズバッと答えます」で取り上げられたテーマについての補足説明などを行っています。今回はコンバインドプレーン理論のベースになっている「スポーツ運動学」について説明します。
運動学と名のつく学問は数多くありますが、コンバインドプレーン理論のベースとなっているのは筑波大学で研究されている「スポーツ運動学」です。この学問は筑波大学で名誉教授になられた金子明友先生によってドイツから輸入されたものです。
◆運動学の歴史
金子先生は1958年モスクワで行われた世界選手権で日本代表チームのコーチを務めていた時に、科学的分析では解決がつかないパフォーマンスの不調(技の狂い)に見舞われた4人の選手を復調させられず優勝を逃したことを悔やんだそうです。その後、日本体操チームはローマオリンピックで世界のトップに立ちましたが、次の東京オリンピックで技の狂いが発生した時の備えとして金子先生は旧東 ドイツでマイネル教授によって提唱された「スポーツ運動学」を日本に持ち込んだのです。この学問は人間の身体運動は機械的には分析できないという考えを前提に、動き方をどのように指導すればいいのかという問題を取り上げたものでした。金子先生は筑波大学にスポーツ運動学研究室を立ち上げこの学問の研究を続け多くの運動指導を輩出しました。この研究室はその後、朝岡先生、佐野先生と受け継がれ今も筑波大学に存在します。
<マイネル教授が提唱したスポーツ運動学の翻訳本>
◆スポーツ運動学の目的
スポーツ運動学は人間の運動における身体能力の限りない可能性を追求する学問であり、運動実践で発生する「動きの感覚」を発見することを目的としています。そこでは、運動している人の感覚とは別の外部視点、すなわち数値や形を扱う科学的研究とは異なる「運動している人の感覚」を分析することで運動の発生と形成の法則を見出していきます。この学問においては、運動する人を「感覚のない動く物体」と考えるのではなく、その人が「どのように」動いているのかを把握することが目指されます。
<金子先生によって上梓された運動伝承の原理>
◆スポーツ運動学的運動指導の特徴
運動する人の感覚である「動きのコツやイメージ、カン」と聞くと科学的ではないと考える方は多いと思います。しかし、この運動学習方法は上級者の運動結果である数値や形を目標にする運動学習よりも学習効果が高いために伝統的なスポーツの世界では重宝されてきました。ただし、このスポーツ運動学が明らかにするコツやイメージ、カンを使った運動指導は「受け入れ側の準備」、つまり学習する人の運動理解度が整っていないと効果は上がりません。そこで指導を始める前に指導者は生徒や選手の動きのレベルを把握する能力が重要になります。消化不良を起こすようなハイレベルのアドバイスや簡単すぎて飽きがくる練習法などはNGです。つまり、スポーツ運動学的運動指導を行うには指導者側にもスキルが要求されるということです。課題の運動が上手いというだけでは指導は難しいということになるのです。しかし、スキルさえあれば逆に自分より能力の高いアスリートの指導も可能になるということです。
<我師朝岡先生によって上梓されたスポーツ運動学の実践方法>
◆運動指導のタイミング
コツやイメージ、カンを使った運動指導ではアドバイスのタイミングも重要になります。なぜなら前運動のコツやイメージ、カンが消去できるかが重要になるからです。外部的分析から運動している人の問題点や上級者の運動との違いを指摘する運動指導であれな提示されるのは修正点と目標値だけなので情報提示のタイミングはいつでもいいでしょう。しかし、運動する人の感覚を使った動きの矯正では前運動の感覚を消せるだけの準備がないと新しい動きのコツやイメージ、カンは発生しません。そこでいつアドバスを行うか? どのタイミングで新しい練習を始めるか? が重要になるのです。
このようなスポーツ運動学をベースにしたゴルフスイング指導法が「コンバインプレーン理論に基づくゴルフスイング構築法」です。
博士プロがズバッと答えます その3
つづく