ゴルフスイングという運動の学習と指導5:ベン・ホーガンの時代のゴルフスイング
前回紹介したスイングは1900年代初頭までゴルフ界で主流を占めていました。しかし、その後の道具の変化によってスイングはさらに変わります。道具の改良では、まずゴルフボールが現在のような2層や3層構造になりました。そして、クラブシャフトは耐久性の良いスチールシャフトに変わったのです。
これによってゴルフボールにはより多くのスピンがかかるようになり、その一方で新しいスチールシャフトはスイング中のねじれ量であるトルクが少なくなりました。その結果トルク量の大きかったヒッコリーシャフトを使いこなしたリストターン動作をスチールシャフトで行い、スピンのかかりやすいボールを打つとフックボールが出るようになってしまったのです。そこで、多くのプロはこのフックボールを生かしてコースを攻めるために、ボールを右方向に打ち出す必要に迫られました。
また、この頃ゴルフ人口が一気に増えたために海沿いのリンクスだけではゴルフコースが足りなくなり、イギリスの内陸部やアメリカでは、人工的に建設されたコースでゴルフがプレーされるようになりました。そしてこの頃、ゴルフコース設計家たちがこぞって戦力性の高いコースを作ったためゴルファー達は高弾道のショットを打つことも求められるようになったのです。
この2つの要求を満たすためにゴルファー達は体の回転を若干変化させていきました。この新しいクラブの振り方は、振り下ろす時の右肩を若干下げながらターン動作を行うというもので、ダウンスイング時にクラブをインサイドから振り下ろすことができました。これによりボールは若干右方向に高めに打ち出すことができたのです。そして、このターン動作を行った結果、フィニッシュ姿勢は逆C型になったのです。
このようなスイングの印象はどうでしょう? この「印象」という言葉が実は運動の学習指導ではとても重要になるのです。そのわけはおいおい説明するとして、皆さんも前回のスイングと今回のスイングを見た印象からどこが違うか考えてみてください。
つづく